肉体のバランス

「立ち姿が絵になる」という言葉があります。

何故絵になるのか?という問いに対して「絵になるキャラクターを持っている人だから」という答えは5%正解で95%不正解です。不正解だった95%の部分の回答は肉体のバランスです。つまり、絵になるように巧くバランスをとって立つ事が出来るので「立ち姿が絵になる」というわけです。肉体のバランスは立つ事だけで無く、座っている時、走っている時、寝ている時、つまり演技している時全てに関わってきます。

何故なら、肉体のバランスを巧くコントロールすることが俳優が存在感を創り出す大きな力の一つになるからです。また、肉体を巧く使うことは役柄にリアリティを出すことに大きな力を発揮することにも繋がります。
俳優としての肉体のバランスをコントロールする基本は自分の重心がどこにあるかを常に把握する事から始まります。これは運動神経が良ければ良いという問題ではありません。

例えば、ハンフリー・ボガード、スティーブ・マックイン、マーロン・ブランドといった名優たちは肉体のバランスを巧くとって絵になるように見せることにかけては素晴らしい能力の持ち主でした。彼らはただ座る、立つ、屈む、歩くといった日常のさりげない動作をスクリーンの上で見事に絵になるように演じてきました。
その動作のバランスの良さと自然さによって役柄に大きなリアリティーを与えてきたのです。

 彼らより運動神経が優れた俳優は沢山いましたが、彼らと同じように絵になるように動ける俳優はそう多くいませんでした。彼らと、ただ運動神経が良いだけの俳優との大きな違いは“俳優としての肉体の使い方”についての理解度の違いといって良いでしょう。
 つまりどんなに絵になる個性的なキャラクターを持っていたとしても肉体のバランスを巧くコントロールする事が出来なければ演技した時に「存在感が薄くなってしまう」ということです。

再びオードリー・ヘップバーンを例えに上げます。
 彼女は肉体のバランスの取り方がとても上手な女優でした。だからこそ、細く痩せたスレンダーな体を華奢に美しく観客に印象付けることが出来たのです。彼女が肉体のバランスの取り方が下手であったのならば印象はまるで変わって、顔はキレイだけど貧相で薄い印象しか観客に与えることが出来なかったでしょう。

俳優としての肉体の使い方と、その基本となる脱力及び重心の把握とコントロールについてのレッスンを行います。