名演の為の俳優術:序文

ここに書かれている事は俳優術に関する全てでは無い。

哲学書によって哲学を学ぼうとする愚かさと同じように演技書によって演技を学ぼうとする事も愚かな行為である。ある種の演技指導者たちは 演技初心者に対してスタニスラフスキーの「俳優修行」を読むことを勧める。手抜きとしか思えぬこの恥知らずの行為が俳優を志す者たちに何をもたらすかを、演技指導者たちはよく考えるべきだ。

私はこのコラムで思いつくがままに任せて俳優と俳優術について書いている。また、部分的にだがショウビジネス界の悪習についても書いて いる。当然のことだがそれを読んだところで俳優術が進歩するわけでは無い。

しかし、名演を志し、進歩を望む俳優達にとっての僅かばかりのヒントにはなると確信する。その事を前提として俳優たちにこのコラムを読んで頂ければ嬉しく思う。

グリフィススタジオ芸術主幹
キリノルイ