俳優が出来の悪い脚本を演じる為に

「台本がひどければ、俳優にはなす術がない。どんな名演技をしようと、まともなドラマが根底になければ、一日中全力を尽くしたところで、 どうにもならないのだ。俳優は芝居の手助けをすることは出来るけど、 成功させることは出来ない」【マーロン・ブランド】

ブランドという男は俳優には珍しく、総体的に作品を創るという作業 がよく分かっていた男である。
だが、仮にブランド程、映画や舞台に対 する造詣が深かったとしても、現在の日本で良く出来た脚本と演出にば かりに俳優がありつき続けるというのは不可能に近いといって良い。いわゆる小商い(収入を得る為のみの仕事)をしなければ残念なことに俳優の生活はままならない。

子供向けの戦隊物・ヒーロー物、2時間ドラマ・特番ドラマの幾つか、深夜ドラマ、といった物は局側がどうPRしようが小商いにしか過ぎない。連続ドラマ、映画、Vシネマの多くにしてもそうである。

ではこの現状の中で観客や視聴者の支持を得て、尚かつ俳優としての技量を高めて行くにはどうすれば良いのだろうか。
幾つかの方法がある。

  1. 1.絶対に手を抜かない事。低いテンションは必ず演技に現れる。
  2. 2.自分の外見的キャラクターを常日頃からよく把握しておき、自分が何をすれば(役と役が行う事、但し大体においてで良い)どう見えるのかという事を良く知っておく。
  3. 3.無駄な動きを極力削り、オーバーアクションを避けて落ち着いて台詞を言う事を念頭に演技設計を立てる。

上記の三つは才能は別にして努力の範疇で充分にやれる事である。また、上記の三つを掘り下げていけば、小商い対策は充分に立つはずである。2分の出番と2行の台詞があれば、自分を観客や視聴者に強く印象づける ことは充分に可能である。但し、それが出来るのは俳優として自分を磨く事を怠らない者だけである。

ところが、多くの俳優はその事が良く分かっていない。
「端役程度なら私にも充分にやれる」というような事を言う輩というのが 実に多い。こういう輩は作品の完成度に余りこだわらない製作サイドのお 情けにすがって役にありつくか、女優であればベッドの中のテクニックを 駆使して小さな役にありつくかしか、役を得る方法は無い。その後は行き詰まって終わりだ。

「ブリット」で僅か数分の出番でメインキャスト並の存在感を発揮した 無名時代のロバート・デュバル、「傷だらけの栄光」でたった一言の台詞 と2分弱の出番で強烈な印象を残した無名時代のスティーブ・マックイー ン。こうした人々と同じ事がやれれば、大手プロを背景にしていなくても必ず良いキャリアを積む事は可能だ。

そして、どんな状況下においても俳優にはやりようがある。そのやりようの事を本当の意味でのノウハウというのである。

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